好きと嫌いという言葉で表現するけど感情はそんな簡単に分けられない
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1.なぜ「好き」なのか?なぜ「嫌い」なのか?
みなさんは「好き・嫌い」とは、どういうことか考えたことがありますか。まず大半の人は「好きは好き」以外の何ものでもないし、「嫌いは嫌い」などと考えているでしょう。
つまり、言葉にしにくい感情だからこそ、単純に「好き・嫌い」という言葉で表現してしまうのです。
では、あなたはいつごろ「好き・嫌い」という言葉を知り、それが意味する内容(気持ち) をわかるようになり、言葉を話し始める前から自由自在に瞬時に使えるようになったのでしょう。その答えを見つけ出すために、以下のことを考えてみてください。
2.
質問
①食べ物の好き嫌いは多いですか? それはなぜですか?
②両親や兄弟は好きですか? 嫌いですか? それはなぜですか?
③大好きな人はいますか? なぜ好きですか?
④好きな色、嫌いな色はありますか? それはどんな色でなぜですか?
⑤自分のどこが好きで、どこが嫌いですか? それはなぜですか?
質問2
①好きな人なら、どんなに痛いことや恥ずかしいことをされてもいいですか?
②好きな人なら、嘘をつかれて騙され、めちゃめちゃになってもいいですか?
③好きな人であれば、自分の財産のすべてを差し出せますか?
④好きな人のためなら命を投げ出せますか?
⑤あなたにとって、一番大事なのは何ですか?
質問3
①嫌いな人に触られた部分を洗いたくなりますか?
②嫌いな人でも自分のためになることがあれば積極的に関係を持てますか?
③嫌いな人に好かれて、次第に嫌いという気持ちが薄らいでいった経験がありますか?
④本当に嫌いな人なら、殺せると思いますか?
⑤飢え死にしそうでも、嫌いな物なら絶対に食べませんか?
さて、以上の質問に対し真剣に考え、真面目に答えた人は、「好き」とは、「嫌い」とは、どういうことかがわからなくなってきたでしょう。
私たちが口にする「好き・嫌い」という言葉の背後には、「快・不快」という情動反応に、「気持ちが良い・悪い」という生理的反応、「都合がいい・悪い」という利害判断、「安全・危険」といった善悪判断などの統合された結果があるのです。
ここで注目すべきは、「好きな人は安全・安心・一緒にいたい」「嫌いな人は危険・不安・傍にいたくない」「好きな食べ物は安全・安心・食べたい」「嫌いな食べ物は危険・不安・食べたくない」「好きな物は都合がいい」「嫌いな物は都合が悪い」
ということ。臭い・音・肌触りなど、みな同じなのです。
「好き・嫌い」という感情を捨てろとは言いませんが、明確で合理的な根拠なしに「好き・嫌い」を決めるのは損だと言いたいのです。
特別な理由がなければ「好き嫌い」、理由があれば「善悪」という理性の問題と言う人がいますが、それは違います。好き嫌いにも言葉にするには容易でない思いが背後にあり、言い換えれば理由はあるのです。